関東二校の卒業生が熱く語る
卒業生座談会

7. 質疑応答:コミュニティの魅力、幸せとは何だろう

司会:ありがとうございました。では、会場の中から、これはという質問がありましたら、いかがでしょうか?

質問者A:今日はありがとうございました。ぼくはシュタイナー学校には行っていませんが、自分でエポックノートを勝手につくっていたなあと思いました。受験のときも、自分で考えてこうだと思えないと学びにならない気がして、納得がいきませんでした。だから公立学校に合わなくて、ずっと不登校だったんです。そのおかげで、他の学び方もあるんだと知ることができました。

今フリーランスなので、多様な教育の現場に行って取材したいと思っているんです。ただ、フリースクールの人たちとは話しをする機会がありますが、シュタイナー教育にはあまり触れたことがなくて。今回、とても印象的だったのが、卒業生の皆さんが話しているときの、それを聞いている先生や親御さんたちのあったかい空気がすごい。ぼくはその輪の中にいたので、その空気に包まれている感じがしました。とくに数学の先生でしたか、あの先生がめちゃめちゃニコニコしていて、生徒と先生のつながりをすごく感じました。この、シュタイナー教育の、生徒も先生も親もひきつけている魅力って何なのか、気になりました。

松浦:ひとつは、みんなで学校をつくっているということがあると思います。先生が授業をつくって生徒がそれを受けるというのではなく、生徒側としても自分たちがこの授業をつくってやっているんだぞと、それくらいのつもりで授業を受けていたし、親御さんたちは校舎の整備とか、いろいろなことをやってくれている。そうやって、みんなそれぞれの立場で一緒に学校をつくっているというのは大きいですね。

昨日、卒業生9人と親御さん11人くらいで飲み会をしたんです。在学時は飲めなかったお父さんたちと、ちょっと距離が近くなったな、みたいな感じです。小さいころからずっと自分のことを知ってくれている親たちと、今もフラットな関係で飲めるという場は、めちゃくちゃホームだなといつも思います。

質問者B:大学1年生です。本日は貴重なお話をありがとうございました。ぼくが聞きたいのは、皆さんにとって幸せとは何かということ。たとえば、「お金持ちになりたい」とか「人のために仕事がしたい」などがよくある答えだと思いますが、みなさんが考えていることがあれば教えて下さい。

藤井:幸せとは何か、ですか。僕は1回ドロップアウトして、いまは自分でお店をやっているんですが、ぼくは絶対にサラリーマンはできないと思っています。社会不適応者ですね。どこかで耐えられなくなるので、自分でお店をやっているのはそれもあります。そんなにお金はいらないかな。お金は最終的に手段であって、例えばこれが欲しいからこれだけ仕事をがんばるというのはすごくいいことだと思いますが、お金のために仕事をするとなると、それが幸せなことなのかぼくにはわからないです。今、こうやって生きているのが、いちばん幸せかな。自分でパン屋をやって、結婚したので奥さんがいて、お金はそんなにないですが、普通に生活していけて、自分をこうやって受け入れてくれる場所があるというのは、すごく幸せだと思います。

菅谷:私もあまりお金に執着はなくて、自分の好きなようにというと語弊があるかもしれませんが、自分の生活スタイルや自分が生きていく場所を選んでつくっていけたら、すごく幸せだと思います。

坂本:シュタイナー学園の卒業生に共通することかもしれませんが、本当に自分の好きなことをやって、自分のやりたいことをやって生きていく。いい大学に行くとか、学歴があるとか、有名企業に就職するとか、そういうことではなくて、「本当に自分がやりたいことはこれなんだ」ということを考えて生きていくことだと思います。私は勉強が好きなので、その勉強をするために合っていた場所がたまたま大学だったから進学して、大学院にも行きたいですけれど、私にとってはそうやって勉強していくことが幸せなのかなと思います。

学生しながら民泊やってます
学生しながら民泊やってます(左が松浦さん)

松浦:ぼくは、最近自分の理想の生き方ってどんな感じなのかと考えていました。「どんな人と」ということと、「どんな場所で」ということと、「どんなことを」して生きていくかという、3軸で考えられるなあと。「どんな場所で」というのは、日本や世界各地をいろいろ渡り歩いていたいなと思うし、「どんなことを」というのは、自分が出来ることは限られているので、周りの人たちと一緒にそれぞれがやりたいことをみんなで叶えていきたいなと。考えた末に、「どんなことを」というより、「どんな人と」ということに行き着いたんですね。やっぱり、「どんな人と」だと思う。そう考えたときに、シュタイナー学校の仲間たちというのは、その「人」にぴったり当てはまっていて、みんなそれぞれの軸をもっていて、自分がやりたいことがあって、ぼく自身にもそれはあって、そういう軸があった上で、こんなことをやってみたいと思ったときに声をかけられる仲間がいる、それがいちばん幸せなことだと思います。

ぼくは「人のため」とか、ぜんぜん言いたくない。人間は究極的には自分のことしか考えられないと思うので、自分のことをそれぞれが突き詰めてやっているんだけれども、自分のことを突き詰めるがゆえに周りの人を巻き込めるみたいな……。自分でも整理しきれていないんですが、そういう仲間たちがいることが幸せだと思うし、今、そういう状況をつくれているし、今後もそういう仲間をもっともっと増やしていきたいなと思います。

浦上:うちの学校の子どもたちの自己肯定感が高いというのは本当のことです。それがなんでだろうと思ったときに評価の物差しがひとつじゃないなと思いました。数学とか理科ができるというのもあるだろうし、手を洗ったらきちんとハンカチで拭いてたたんでしまえるということだってあるだろうし、子どもたち一人ひとりのことをよく見ていると、どの子にも素晴らしいところが見つかる。学園では、演劇だとか、ものづくりだとか、いろいろなことをやりますから、何かで輝けない人はいないんです。そのことで、子どもたち同士の間でも、「このことはちょっと苦手だけれど、これに関してはこいつはすごい」と、どこかで必ずみんなに認められています。そういうことが、彼らの自己肯定感を高めていると思います。小さな学校だからできることかもしれませんが。

司会:皆さま、長い間拝聴していただき、ありがとうございました。卒業生の皆さん、ご出演どうもありがとうございました。

 

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