関東二校の卒業生が熱く語る
卒業生座談会

5. 卒業プロジェクト、ずっと変わらないクラス

菅谷さんが最近手がけたミツバチのアート
菅谷さんが最近手がけたミツバチのアート

菅谷:12年生のとき、ひとつのテーマを自分で選んで、卒業論文にまとめて、お客様の前で発表するというカリキュラムがありました。大学4年生のような内容だと思いますが、ひとつのテーマを自分で選ぶところから始まるので、そのテーマに長く深く付き合うことになります。そのテーマがどれだけ自分に影響しているのか、今の自分の進路などを振り返るとわかります。

司会:人の前で1時間話すのは、きつくありませんでしたか?

菅谷:楽しかったです。自分の好きなテーマを選んでいいので、興味のある分野をひたすら調べて、それをさらに自分なりに考察して人の前で発表する経験でしたから。書いているときは、「きつい、きつい」と言いながら書いていたと思うのですが、楽しかったです。

司会:松浦さんはどうでしたか? 「環境」というテーマでしたね。

松浦:今の自分に直結していると思いますし、楽しかったです。今でも時々卒論は読み返します。このとき思い描いていたことを、今ちゃんとやれているなと思ったりする。あれだけの時間をかけて、自分でアンテナ張って、情報を捕まえてきて、それを自分の中で咀嚼して、文章にして、その上でお客さんたちに向けてアウトプットする。1年かけてインプットし続けながら、咀嚼し、最後にアウトプットするという過程を経験できたのは、すごく力になっていると思います。あれだけ突き詰めて考えた充足感みたいなものは、今も思い出します。あの感覚はもう1回味わいたいなと思いますね。

司会:もうひとつ、ずっと同じクラスで、ずっと同じ友だちと一緒の学びについてはいかがでしょうか。クラス替えがない中でやっていく、それがどういう体験だったのか。嫌いな人が出てきたらどうなるのか。いかがでしょうか?

坂本:小学校1年生のときから知っている友だちで、学園を離れてからおよそ5年経った今でも連絡を取っている人はたくさんいますし、高等部まで12年間シュタイナー学園にいた人、一般の高校に進学した人、大学に行った人、海外に行った人、自分の好きな事業を設立した人、いろいろな人がいます。そういう人たちと何の違和感もなく会って一緒にいられるというのは、非常に貴重な関係だなあと思います。ずっと同じクラスですから、結びつきも強いし、忘れないです。しかもその同じクラスで演劇をやったり、一緒に熊本に行って農業実習したり。体験を通してまた新たな人間同士の結びつきが生まれますよね。そういうことを一緒に9年間体験してきた仲間と、学園を離れてから5年後の今でも交流がある、これは貴重なことだと思います。

で、嫌いな人ですか?

司会:ぶつかった人とか。

坂本:例えば11年生くらいになって、周りの子たちと「もう、11年目だよ」などと言っているような話をしたことはありますが、でも、それも11年一緒にいるから言えることなんだろうと思います。昔、ユーモアのエポック授業で、「切りたくもあり 切りたくもなし」という七・七の句につける、上の五・七・七の句を考える課題を発表した上のクラスがあって、「長年のこのクラスとのくされ縁 切りたくもあり 切りたくもなし」という句を発表した人がいました。

一同:

坂本:でも、「切りたくもなし」なんでしょうね。本当に強い関係だと思います。

松浦:ぼくのクラスは、ぼくが入った頃は、いろんなやつがいてすさまじかったんですよね。でも、そこを乗り越えてきた仲間たち、お互い良いところも悪いところも知っていて、知っているうえで全部まとめて信頼し合っている仲間たちだと思っています。

ぼくは地方に行きましたが、東京に戻ってくると絶対にみんなと会います。全員が集まることはなかなかないですが、それぞれの今後も楽しみだなあといつも思っていて。今すぐ一緒にやるという話ではないかもしれないけれど、もしかしたら10年後に一緒にビジネスを始めるとか、一緒にお店を出すとか、そんなこともできる仲間たちだなと思っていますね。

それから、本当に面白かったのは、とくに高等部に入ると、放課後になってもみんなぜんぜん家に帰らないんですね。教室に残って、こっそり持ってきたボールを蹴りながら、日本の未来について普通に語り合っている。そういう仲間は、今の大学にはほとんどいないなあと思います。

藤井:ぼくの場合は1年半しかいなかったので、逆に言うと、みんなが11年間ずっと一緒だったところに僕がぽんと入ってきたわけです。ただ、閉鎖的な感じはなくて、入りづらさはなかったです。すごく開放的で、自然に受け入れてくれた。クラス同士がずっと仲よしというよりは、みんながそれぞれ好きなことをやっているという感じでした。例えば、普段は無口でまったくしゃべらない子が、突然、劇で主役をやりたいと言い出しても、みんな「あの子が?」ということもなくて、「あ、いいんじゃない」と自然に受け取っていました。

今でも会うと、その時と同じような感じです。何年も会っていなかったのですが、4年ぶりくらいに会っても、「どうしてるの?」「あの時、外国に行ってたけど、どうしてた?」みたいに、学校にいたときと同じように自然に話せますね。

菅谷:私のクラスは出たり入ったりがあって、私がいる間ずっと一緒だった女子はひとりしかいなかったので、男女関係なくクラスみんなでぎゃあぎゃあ言い合いながらひとつのことを決めていったりしました。みんなが喧嘩できる相手だったので、お互いに言いたい放題言い合って、でも、なんだかんだとまとまっていく関係性でした。「こいつが言っていること、本当に嫌なんだけど」と、言い合う中で解消されていく。「お前は絶対こう言うだろうけれど、私はこう言う」というふうに、それは相手を信頼していたからこそできたのだと思います。

大学に入ってからできる友だちは、ある程度は自分と同じ方向のことをやっている友だちなので、その内容について話すのは面白いですが、シュタイナー学校の友だちはみんな、本当にばらばらなことをやっていて、かつ、すごく自分のことを知ってくれているので、自分のやっていること、相手のやっていることについて、すごく面白い話ができます。

【次ページに続く】

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