道徳教育が教科化され、道徳が点数で計られる時代の流れのなかで、ヴァルドルフ/シュタイナー教育はすべてのカリキュラムと教授法のなかに道徳教育を浸透させ、学びそのものが高い倫理性を育んでいくようにデザインされています。
本書は、『マンガでやさしくわかるシュタイナー教育入門』の執筆者でもある著者が、そんな〈見えざる道徳教育〉の理念を平易に説き明かし、日本の実践の現場に事例を取材してそれを具体的に裏付けた野心的な一冊です。
道徳を教えることが道徳を遠ざけるというパラドックス。それを克服していくための明快な道筋がこの本に示されています。
内容紹介
シュタイナー学校の道徳教育
定価 2,500円+税、著:井藤元、刊:イザラ書房、264ページ
第1章 シュタイナー学校における道徳教育と芸術教育の連関
- 「道徳」の授業なき道徳教育
- 芸術の位置づけ ― シュタイナーの道徳教育論を支える芸術論
- シュタイナーにとって芸術とは何か― 感覚的=超感覚的なものの表現としての芸術
- ゲーテの芸術論を支えるゲーテ自然科学
- ゲーテ自然科学研究の意義
- 自然認識から芸術的創造へ
- シュタイナーにとって道徳とは何か
- 直観の道徳的行為への応用 ― 道徳的直観をめぐって
- 道徳的人間=自由な人間
- 自然認識、芸術的創造、道徳的行為の連関
- 道徳教育における権威の必要性
- シュタイナー学校の授業における感覚的=超感覚的なものの提示
― エポックノートにおける感覚的=超感覚的なもの
- インタビュー① 教科の学びにおける道徳教育の実際
- 世界の美しさに触れる
- 教師の「権威」について
- 子どもの問題行動への対応
第2章 フォルメン線描の道徳的意義
- シュタイナー学校における道徳的基盤 ― フォルメン線描の目的
- フォルメン線描では何がおこなわれているのか
- シュタイナー教育はすべての教科がフォルメン的である
- シュタイナーのフォルメン、クレーのフォルムング
第3章 道徳教育としての音楽教育
- シュタイナー教育の柱としての音楽教育
- シュタイナー音楽理論の理論的背景
- 音楽と自由
- ドイツのシュタイナー学校における音楽の授業実践
- 「精霊ごっこ」の事例
- 「ムジーククーゲル遊び」の事例
- 「聴く」ことの意味
- インタビュー② 道徳教育としての手仕事
- 自己肯定感を育む手仕事の時間
- 手仕事の教員の立ち位置
- 手仕事におけるリズム・繰り返しの重要性
- 発達段階に応じた手仕事の課題
- 8年生の劇について
- クラスがうまくいっていない場合に手仕事の教師はいかに子どもと関わるのか
- 手仕事の教師による雰囲気作り
第4章 道徳教育としての国語教育
- 国語における道徳教育 ― ユーモアエポックの事例
- ユーモアエポックの位置づけ
- シュタイナーにおける笑いの意味
- ツァラトゥストラの笑い ― シュタイナーのニーチェ解釈
- 学校法人シュタイナー学園におけるユーモアエポックの授業
- ユーモアエポックの授業方針と授業計画
- 授業の流れ
- ユーモアエポック 第1週の学び
- ユーモアエポック 第2週の学び
- ユーモアエポック 第3週の学び
- 自由への準備としてのユーモアエポック
- インタビュー③ 道徳教育としての演劇教育
- シュタイナー学校における演劇教育
- 長期的ヴィジョンに基づく教育
第5章 シュタイナー学校では教師をいかに育てるのか
- 道徳教育を担う教師をいかに育成するか ― シュタイナー学校における教員養成
- 道徳教育と教員養成の構造的一致
- 滲みこみ型の教員養成
- 受講者には何が求められているのか
- 直観はいかに磨かれるか ― 聴くことの意義
- フォルメンを生きるシュタイナー学校の教師たち
- 同僚性に基づく教師の成長 ― 長期的展望に基づく教師同士の関わり
- 魂のあり方の変容に向けて