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【ご挨拶】2019年のはじまりに

2019年1月3日 更新

はた りえこ(日本シュタイナー学校協会代表)

2019年が始まりました。地球の上には、様々な夜明けがあります。迎え方も異なります。時にはゆったりとし、ある時はとても集中する私たちの日常にも、大きな変化を意識する時が何回かあります。

今年は、ヴァルドルフ100周年、1919年ドイツ-シュツットガルトに最初のヴァルドルフ(=シュタイナー)学校が創立され、激動の歴史を経て、世界中に1,000を越える学校を生み出す潮流となった100年が、次の100年へと移るのがはっきりと意識される時です。

しかし、この移行は、私たちが何もせずには起こりません。ヴァルドルフが次の100年にも有効な理念と方法として発展していくには、何が大切なのでしょうか。3つのキーワードが浮かんできます。

  • 持続可能であること
  • 当事者意識
  • 生きる生命となる人間像

経験を重ねてきたヴァルドルフ学校は、未来に生きる力を持つ卒業生たちを送り出していますが、教育の担い手は老齢化しています。日本では学校数も生徒数も決して増え続けてはいません。世代の老化自体より、創造性や方法が硬くなるのを克服することが肝心なのかもしれません。健康に生きるための土と水と空気を次世代に渡すために多くの創意と労力が要るように、教育の分野でも、子どもの健康な成長を可能にするために、その都度新しい方法が編み出されます。発想の転換も、時には必要です。

「部外者は一人もいない。皆関わりあっている」ある美術展の展示でみつけた言葉です。展覧会のテーマは、ポストネイチャー。一個の生態系である地球の現在の危機やメッセージがアートで表現されていました。

目の前の子どもに向かい、教員と親と共に働く、この行為が、時代と社会に何かを発信する力になることが、これからは重要です。ヴァルドルフ教育に心を寄せる人だけでなく、無関心な人、反感を抱く人にさえ、何か意味を持つものを私たちは伝えられるでしょうか?ヴァルドルフ学校は小さな教育運動ですが、現代に灯る一点の明かりとなって、世界を変えようとする他の輝きと共存したいと思います。

人が育つ原動力となるのは、「人生は生きるに値する」という感覚を私たちにもたらす人間像ではないでしょうか。一人ひとりが全くユニークな存在であり、誰の中にも、太陽の光のように他の存在にはたらきかけられる力があること―人間の尊厳を支える認識あるいは直観が、ヴァルドルフ教育の根幹にあります。こうした人間像を他者の中に見出だす努力と、人と人そして人と事物との直接の出会いがあります。

年の始まりに、みなさんの仕事と生活に新しい力と勇気と光を望み、100周年の行事などで、各地でお会いすることを楽しみにしています。

2019年1月3日 

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ヴァルドルフ/シュタイナー教育100周年