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2024年2月18日 更新
本書の序文には「神秘のヴェールに包まれたシュタイナー学校の教師たちの姿に迫ること」を目的として執筆されたと記されています。教育実践が記載された書籍は多数出版されていますが、それらを実践している教師の実像に迫る内容は、シュタイナー学校のホームページに掲載された教師へのインタビュー記事以外はなかなか見ることができません。
このような記事はとても興味深いものも多く、生の声を聞くことができる非常に貴重な存在です。本書では、大学で教育学の基礎理論に関する講義を担当されている筆者によるインタビューの内容が数多く掲載されています。しかも、その内容の解説・分析がかなりのボリュームで掲載されています。そのため、今までにはないとてもユニークで貴重な本になっています。
こちらは、シュタイナー学校の教師を目指している方はもちろんのこと、シュタイナー学校への子どもの入学を検討されている方もとても興味を持って読み進めることができます。
なぜなら、前者にとっては、現役教師の来歴となる22の物語や教員養成の過程の具体的なエピソードに触れることでき、さらに長年教師の卵を送り出してきた筆者の経験に基づく的確な付加情報があるからです。
後者にとっては、自分たちの子どもが長い間学ぶことになる学校の教育観を実体のある教師の生の声から聞くことができ、さらにその教師たちの学び続ける姿勢や態度についてもうかがい知ることができるからです。
もちろん、教師に求められることを実現するための困難さや現在に至るまでの失敗の例も述べられており、全てがうまく順調に事は進むわけではありません。
しかしながら、少なくとも本書により、シュタイナー学校の教師が神秘のヴェールから姿を現し、より解像度の高い状態でその姿に迫ることができるようになった事は、とても大きな成功であるといえるのではないでしょうか。
著:井藤 元
発行年月:2023年11月30日
刊:ナカニシヤ出版、A5、248ページ、2,750円(税込)