関東二校の卒業生が熱く語る
卒業生座談会

「未来の先生展2018」で開催した関東2校の卒業生による座談会の記録を、100周年記念コンテンツとしてお届けします。

ヴァルドルフ/シュタイナー教育で育った卒業生が、どのような価値観をもってどのように生き、また、自分の学生時代をどのような想いをもって振り返っているのかが伝わる、ライブ感あふれる記録をお楽しみ下さい!

発言者紹介


藤井拓麻/ふじい たくま
高校2年の後半からシュタイナー学園の11年生に編入し、1年半学ぶ。その後はドイツに渡り、様々な体験を経て現在はベーカリーを営む。

松浦生/まつうら いくる
小学校4年生の年に東京賢治シュタイナー学校に編入し、2014年度に12年生を修了し、現在は公立鳥取環境大学4年生。

坂本新太/さかもと あらた
シュタイナー学園が学校法人化された2005年に小学1年生として入学し、9年間の学びの後、東京都立国立高校に入学、現在は東京大学文科三類の教養学部(前期課程)で学んでいる。

菅谷杏樹/すがや あき
小学校5年生に上がる年に、東京賢治シュタイナー学校に編入し12年生まで学ぶ。その後、ドイツのユーゲントゼミナール(世界中の若者がともに暮らしながら様々な学びや芸術を体験するユースキャンプ)に1年滞在し、現在は東京藝術大学美術学部の修士課程。


鳥山雅代/とりやま まさよ(司会進行)
東京賢治シュタイナー学校(東京都立川市)教員。オイリュトミー、国語、美術。

浦上裕子/うらかみ ゆうこ
学校法人シュタイナー学園(神奈川県相模原市)高等部校長、英語教員。

座談会スタート

1. それぞれのシュタイナー学校との出会い

司会:本日来て下さった卒業生4人は、公立学校とシュタイナー学校の両方を知っている方々です。さっそくですが、2つの学校の体験について、坂本さん、いかがでしょうか。

坂本:シュタイナー学園で学んだ後に就学したのは普通の都立高校ですから、定期試験もありますし、成績も毎回5・4・3・2・1とつくわけです。普通の学校はこんなものなのかなと思いましたが、マークだけのセンター試験で何点とらなきゃいけないというような受験勉強は窮屈だなと思いました。

シュタイナー学園での勉強は、教科書に書かれたことを知識として吸収するのではなくて、自分で聞いた話を自らノートに書きますから、自分が得たものを吸収する仕方がまったく違いますね。

そういう意味では、個人的にはシュタイナー学園の学びの方が面白さや気づきがありました。現象を見て自分で法則を引き出すというような、実体験を重視する授業は豊かなものだったなと思います。

あとは、その中で学んでいる生徒についてですが、高校の同級生の中には、大学での学びや受験で苦しんだりもやもやしていたりしている人が結構います。それを見ていると、シュタイナー学園の生徒はみんな、それぞれ自分のやりたいことを突き詰めて生きているなあと思います。

菅谷:私の場合、公立に行っていたのが小学校4年生までなので、うまく比較できるかは分かりません。私の場合はまだ小さかったので、自分の意思でシュタイナー学校に入るというより、母の意思で入学したのですが、最初はあまりにも違う世界で驚いたところはありました。例えば、朝のリズムの時間には、みんなが体を動かして歌を歌っているのに、ちょっとドキドキしたとか。ただ、もともと外遊びも好きでしたし、絵を描くのも好きだったので、自然に入っていけました。遊びと学びが完全に分かれていたところから、ここではそれが一緒になった学びだったように感じています。

司会:今、菅谷さんがおっしゃったリズムの時間というのは、朝の授業が始まるときに、低学年であればあるほど体をたくさん動かして、歌を歌って、踊りのような芸術的な活動を行うことです。藤井さんの場合は、高等部になってからシュタイナー学校に行ったのですね。

藤井:そうです。ぼくの場合は、自分で決めて入きました。公立の都立高校に通って、その後半年くらいで中退して2年くらいフリーだったのですが、その後に藤野の高等部ができたんです。

学園祭、オープンデイに行ったら、すごく授業が面白そうだったので行こうと思いました。

司会:浦上先生、彼が高等部に来た当時のことは覚えていますか。

浦上:覚えています。拓麻くんは最初2か月くらいお試しで来ていました。当時高等部は学校法人ではなくてNPO法人だったので、その辺りはわりと自由でした。高校生が自分たちで作った小さなドームハウスがあり、そこが彼らの教室でした。結局拓麻くんはそのまま卒業までいました。おとなしくて、ピアノがとても上手で、クラスにもチェロやヴァイオリンが上手な人がいたので、学園祭でアンサンブル演奏したりして、すぐに馴染んでいました。

司会:松浦さんはいかがですか。

松浦:ぼくは小学校4年生のときに編入しました。母はぼくをシュタイナー学校に行かせたかったみたいで、賢治の学校の土曜クラスや発表会にはしょっちゅう連れていかれました。せっかく学校が休みなのに、土曜日に別の学校に行くのは嫌でしたが、行くとすごく楽しかったですね。公立の学校もクラスメイトや先生には恵まれたので楽しかったですが、授業が楽しいという感覚はありませんでした。でも、賢治の学校に行ったら、「はい次、体育の授業です」と言って、多摩川に行って化石を探すみたいな。ぜんぜん体育じゃない(笑)。親に「転校しない?」と言われて、ほかはぜったい嫌だけど、あそこなら行ってやってもいいかなと賢治の学校に入りました。それ以降はずっと賢治なので、比較はできないです。

大学に入ってから思ったのは、大学の期末テストなどは基本、記述式ですよね。周りの友だちを見ていると、「分からないから書かなかった」と言っている。ぼくなら、分からなくても分かってる風に書くのになと思いました(笑)。そうか、分かるか分からないかで判断してしまうんだなと、周りを見て思いました。シュタイナー学校の授業は〇か×かという授業ではないので、そういう力は培われたように思います。

【次ページに続く】

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