エマーソンカレッジ(イギリス)での「スピリット・オブ・イングリッシュ」コース、シュトゥットガルト(ドイツ)の大学での「イングリッシュ・イヤー」、ブダペスト(ハンガリー)でルドルフ・シュタイナー・セミナーを主催するほか、ロシアとイタリアのヴァルドルフ学校にも勤務。
2000年代より日本における人智学研究にも積極的に貢献してきた。その美術史研究は、巨石文化、ケルト美術と初期キリスト教美術、イタリア・ルネサンス、19世紀イギリスの芸術家、そしてゲーテアヌムの建物とその周辺における建築、彫刻、絵画、色ガラスといった表現にまで及ぶ。
希望に満ちた出発から、迷い道や険しい山谷を越えて歩み、やがて「想像を超えた何か」に至る旅。目標を見失ってはまた新たに見つける旅路の上でいつの間にか、自分自身が変容しているような旅。
たどり着いたその先で、人は外なる世界を知り、内なる人生の意味を感受します。
芸術家にとってその旅とはまず素材や様式を学ぶこと、ある時点でそれを手放し新たな表現を見出すことで、ヒルマ・アフ・クリントの人生と作品にもそれが如実に表れています。
風景画や肖像画など彼女の具象的な作品には、植物研究や解剖学の基盤に立ちながら、光や色彩を繊細に表現し、魂の雰囲気を見事に伝える、天賦の才があふれています。
しかし本人にとってより切実だったのは「日常の目には見えない深いビジョンを、色や形、イメージで表現すること」でした。
ヒルマは生命に宿る「リズムと変容」に注視しました。『10枚の最大作品』ではそれらが大胆に、『エロス・シリーズ』では繊細に、『白鳥と鳩』シリーズではエネルギッシュに、『薔薇シリーズ』では性の神聖さを通し、『パルジファル』シリーズでは謎めいた変化を通し、『知識の樹』シリーズでは繊細な形態で、それぞれ描き出されています。
彼女は、植物を観察し、創造的な瞑想を重ねることでこの「変容」をつかみました。繊細な線描はやがて、明確な思考のように直観的な幾何学的表現へと進み、さらにはより本質的な道徳的指針にまで至りました。彼女の作品全体に、このような「変化と成長」に関する真理が表れています。一つのイメージが変化して、次の作品に描写される。
そんな連作は観る者に「生きたプロセスをとらえ、過程を肯定する心」を伝えます。
にじみ絵(濡らした画用紙に水彩絵の具を含んだ筆で描く)技法との出会いは、彼女にとって大きな転換点でした。この技法により、連作ではなく一枚の作品の中で、変容のプロセスを体験することができると気づいたからです。
ヒルマが探求を通して得たもの、それはこうした「変容を統合的に示す絵画表現」でした。彼女の人生を通した芸術の旅は、若き日の友人との作業、精神世界への関心、神智学との結びつきによって広がりました。生前のルドルフ・シュタイナーと出会い、にじみ絵技法を紹介されたことで、長い探求の道のりは成就へと至りました。彼女はゲーテアヌムで「自分の家に帰った」と感じ、アントロポゾフィー(人智学)に、内に抱いてきた深い願いへの答えを見出しました。1920年代初頭には人智学協会および精神科学自由大学の会員となり、シュタイナー死後の協会運営に失望したものの、1944年に亡くなるまで人智学への献身を続けました。
こうした全てに目を向けると、人間にとっての探求の意味に改めて気づかされます。長い旅路を経ていつしか、当初の予想とは全く異なる成果へと至る、その道中の模索(プロセス)も決して無駄ではないーそんなことが原型的に示されているのです。ヒルマ・アフ・クリントの人生と作品そのものが「変容を、統合的に表現した作品」なのです。
会場となる東京都郊外昭島市のFOSTER ホールに集結するのは、全国の高等部生徒約130名。130名の命がともに集い、ひとつの芸術を創り出します。皆様のご支援をお願いいたします。
・ イベント概要 ・ ご寄付について