広がりと連携

国際ヴァルドルフ教育フォーラムとの連携

国際ヴァルドルフ教育フォーラム(通称ハーグサークル)は、世界各国のヴァルドルフ教育運動代表者たちによって構成され、スイス・ドルナッハのゲーテアヌム教育部門と連携して活動します。参加国の地域は全ての大陸にわたりますが、教育運動がアントロポゾフィーと結びついたかたちで恒常的に営まれていることが参加の条件になるので、学校のあるすべての国からの参加にはまだなっておらず、2016年現在、メンバーはおよそ40人です。アジアからはインド、台湾と日本が加わっています。会議は1年に2回、春には参加国の一つで、秋にはスイス・ドルナッハのゲーテアヌムで、数日間に亘って行われます。

シュタイナー学校運動は、今や世界60数ヵ国に1,000校を超え、様々な民族・文化・風土・国家・社会にまたがる広がりを持っています。子どもの成長の法則を基盤とすることは共通であっても、国や民族によって、教育の表れ方は驚くほど異なることもあります。この会議では、そうした多様性を受け入れながら、ヴァルドルフ教育はどこに向かうのか、今必要な課題はどこにあるのかを話し合います。

各国の教育運動の現状を共有し、民族の文化や地域性を越えて世界的な意味を持つ問題は何なのか、相互の理解がはかられ、意見交換が行われます。ヴァルドルフ学校ならではの本質的特徴について、あるいは2019年に100周年を迎える節目の迎え方について、メンバーそれぞれの体験を持ち寄っての集中した議論は、活気があり、集中したものです。

メンバーは、各国でヴァルドルフ教育に責任を持つ機関(日本なら日本シュタイナー学校協会)と意見調整して任命されます。日本がこの会議に入るきっかけとなったのは、ゲーテアヌム教育部門前代表・クリストフ・ヴィーヒェルトが、2007年に来日したことでした。彼は、当時、全国の学校を訪れ、日本がこの国際的な輪に加わる必要性を感じ、まだ学校協会が誕生する前でしたが、メンバーを送ることを薦めました。

私たちは、日本でこの教育を育てながら、国際的なつながりの輪に入ることで、世界と共に発展することができます。地球規模での運動の大きな息吹と交流することは、これからも、とても大切な課題であり続けるでしょう。

ユネスコ

国連の教育科学文化機関・ユネスコは、文化や科学、とりわけ教育を通して世界平和の実現を目指す国際機関であり、その理想はシュタイナー教育と高い親和性をもっています。ユネスコ憲章の前文に掲げられた「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」という理想を、シュタイナー教育は実践レベルで実現しているからです。

ユネスコ21世紀教育国際委員会が1996年にまとめた報告書において、ユネスコは21世紀の教育の要となる4つの柱を提示していますが、これらもシュタイナー教育の実践と一致します。

  1. Learning to know / 知ることの学び
  2. Learning to do / 為すことの学び
  3. Learning to live together, Learning to live with others / 共に生きることの学び
  4. Learning to be / 人として在ることの学び

さらに、現在ユネスコは「持続可能な開発のための教育」(ESD = Education for Sustainable Development)を推進していますが、地球の持続可能性を指向する学びという点においても、シュタイナー教育とユネスコの方向性は一致しています。

この、ユネスコとシュタイナー教育の共鳴を裏付ける動きが、シュタイナー教育の国際支援機関である社団法人ルドルフ・シュタイナー教育芸術友の会(本部:ベルリン)とユネスコとの間で生まれました。1994年、世界各国の文部科学大臣が参加するユネスコ国際教育会議においてシュタイナー教育の展示会が開催され、ユネスコからその企画運営を委託されたのがルドルフ・シュタイナー教育芸術友の会でした。ユネスコとの協力活動の結果、2001年5月の第161回ユネスコ理事会においてユネスコは同法人との公式パートナーシップ関係を承認するに至りました。

このことがきっかけとなり、数多くのシュタイナー学校がユネスコの理想を実現する学校のネットワークであるASPNet(UNESCO Associated Schools Project Netowork / 日本国内ではユネスコスクールと呼ばれている)に参加し、ユネスコとの連携を築いています。また、ユネスコの事業としてコソボ紛争後の復興活動に取り組み、平和教育者の育成に大きな成果を上げているシュタイナー学校の教員もいます(関連情報リンク4項の資料参照)。

日本でも2010年から2011年にかけ、京田辺、横浜、東京賢治の3校のシュタイナー学校がASPNet(ユネスコスクール)への加盟を認められました。その後の地道な活動が評価され、2016年には3校すべてが文科省の認定するESD重点校に採択され、うち2校はユネスコ・パリ本部の推進する国際旗艦プロジェクトへの参加権を得ることができました。これら3校がいずれも学校教育法第1条に位置づけられていないNPOベースの学校であることは特筆に値するでしょう。

ユネスコ関連の情報リンク

幼児教育

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健康と医療

シュタイナー教育の提唱者であるルドルフ・シュタイナーは健康や医療に関しても造詣が深く、多くの業績を残しています。その考えから出発した医学はアントロポゾフィー医学と呼ばれ、同じくシュタイナーの考えに基づいた看護や芸術療法などの各種の療法とともに現在世界各地で実践されています。

これらの医療や療法の基礎となるシュタイナーの人間観は、シュタイナー教育の基礎をなす人間観と同一のものです。それは人間を単なる肉体的な存在以上の全体的な存在ととらえる人間観であって、シュタイナー教育ではその全体的な存在が子ども時代にどのように発達していくのかを認識したうえで、ひとりひとりの子どもに対してそれぞれの発達段階に応じた働きかけを行います。そのように独自の方法論で人間存在全体に働きかけることで、知性・感情・意志の調和をはかり、それが心身の健康へとつながると考えられています。

アントロポゾフィー医療において健康とは、人生で遭遇するさまざまな身体的、心理的、社会的な問題に対して抵抗力や回復力を発揮して再び自らのバランスを取り戻す能力のことであると考えられています。シュタイナー教育では適切な時期に適切な方法で子どもたちに働きかけることによって、そのような能力を育んでいくことを目指しています。そして学校教育の中で育まれたそのような能力は、生涯にわたってその人の健康に影響を及ぼすと考えられます。

そのような観点から考えた場合、シュタイナー教育は予防医学であると言うこともできます。またこのように健康を自ら作り出す能力に着目した考えを健康創生論と呼びますが、シュタイナー学校ではそのような見地に立って教育を通して健康を育んでいると言えます。

すでに多くのシュタイナー学校の卒業生がいるヨーロッパなどでは、成人したシュタイナー学校の卒業生の健康状態に関する調査がいくつか行われています。その中にはシュタイナー学校の卒業生が一般よりも良好な健康状態にあるという傾向を示した研究もあり、そのような結果を確認するための研究がさらに進められているところです。

このようにシュタイナー教育はもともと健康や医療と深い関係を持っています。実際にシュタイナー学校発祥の地であるドイツなどでは、多くのシュタイナー学校で学校医をはじめオイリュトミー療法士や治療教育者などが日常的に教育の現場で教師たちと密接な連携を取って子どもたちの心身の健康を支える体制が整えられています。日本のシュタイナー学校では、このような教育と医療との連携はまだ始まったばかりと言えますが、2016年5月には日本アントロポゾフィー医学の医師会の主催で「アントロポゾフィーに基づく医療と教育のための集中セミナー」が開催され、日本シュタイナー学校協会も後援に加わりました。そこではシュタイナー学校の教員や治療家、医師など総勢160名が3日間の合宿形式のセミナーで共に学び、議論をしました。

日本でもこのようにお互いがより緊密な連携を取って協働していこうとする活動が始まっています。今後日本のシュタイナー学校でも、子どもたちの心身の健康をさらに増進していけるように教育と医療の連携体制をより充実させていくことが期待されています。

医療関連の情報リンク

農業

農業は人の生命を支える重要な営みであるばかりでなく、私たちが暮らす地球の持続可能性に直結する大きな問いそのものでもあります。シュタイナー教育では、子どもたちができるだけ多面的に農の営みを体験できるよう、成長の段階ごとに様々な取り組みを行っています。

たとえば、日本では3年生の「生活と仕事」の一連のエポックのなかで、実生活と関連づけた稲作の体験的な学びが行われています。そこでは、自らの手足を使った自然への働きかけから日々の糧を得るという、人と自然の根源的な関わりが体験的に学び取られています。こうした学びは4~7年生の動物学、植物学、鉱物学の学びに引き継がれ、自分の周囲に多様性をもって広がるエコロジカルな世界のイメージを子どもたちは描けるようになります。さらに、6~8年生では自分たちの庭園を世話する園芸実習が年間を通じて行われ、植物を育てる上での実際的な知識や観察力の重要性を学び、生命や環境への責任感を育みます。さらに9~10年生では、2~3週間にわたる本格的な農業体験や林業体験を通じ、子どもたちは職業的な専門性のなかで農の営みを総括します。

以上のような実践的学びの縦軸のなかに、郷土学、栄養学、化学、地学、気象学などの横軸の要素が加わり、人と農との関係を生活領域から地球規模の現象に至るまで地続きで理解することが可能になるのです。

こうした学びは、地域の理解ある農家の協力を得て行われるほか、日本各地のバイオダイナミック農場にお世話になる学校もあります。

バイオダイナミック農法(ビオディナミ農法、シュタイナー農法)はルドルフ・シュタイナーの示唆に基づいて始まった有機農法で、健康な野菜を生産するだけでなく、農をベースにした適正な経済活動基盤づくりへの取り組みや、健全な地力の回復とエコロジカルな農環境デザインによって農と環境の持続可能性創出に貢献しています。

バイオダイナミック農業の特徴のひとつに、森林や草地、湖沼やそこにすむ生物、牧草地やそこで飼育される家畜などを包括的な視点で捉え、農場を周囲の環境との関係においてひとつの有機体へと整えていくことがあります。耕作地をとりまく環境全体の循環に農業を位置づける考え方は、先述したシュタイナー教育の学びの本質とも重なり、バイオダイナミック農業の実践者と教育者の連携による良質なシナジー効果が期待されます。

シュタイナー教育とオイリュトミー

オイリュトミーは、全学年に必須の運動芸術科目として、シュタイナー教育と共に歩んできました。

もともとは、20世紀の初頭に、動きによる新しい言葉と音楽の表現として、ルドルフ・シュタイナーの人間観を基盤に誕生しています。現代の舞踊が、身体の技術と感情表現に重点を置いているのに対し、内面とつながった身体と、思考・感情・意志すべてを含む心の表現を目指します。オイリュトミーの名称が、ギリシア語に由来し、「調和の美しいリズム」を表すことにも、この動きの性格が表れていると言えるでしょう。

幼児から12年生まで、年齢を追って発展するオイリュトミーのカリキュラムは、語学・音楽・美術のみならず理数系の科目とも関連し、子どもは、自分の腕で音の響きや法則性を表し、空間に様々なフォルムを動く能力を培います。

その作用としては、

  • 言葉や音楽を、読んだり聞いたり書いたりする以上に深く体得できる
  • 共に動く他者との調和と社会性が育つ
  • 理解と感受が動きと結びつくため、考えることと感じること、そして行うこととの間が障壁なく行き交う
  • 空間感覚と直観が発達する
ことなどが挙げられます。

高学年、特に高校生以上ともなれば、学校生活での季節の行事で高校生たちが発表したり、また卒業時には、素晴らしい舞台公演をするなど、日常の枠を超えた芸術としての役割も果たします。

このような教育芸術としてのオイリュトミーに加えて、芸術療法としてのオイリュトミー療法(ハイルオイリュトミー)も、ヴァルドルフ学校の教育の中に取り入れられています。治療オイリュトミーの専門教師が、医学と連携して、気質や神経など何らかの健康上の困難を持つ個々の子どもに動きによる練習を選び与え、それを通して子ども自身の力によって困難を克服する力を生み出すのです。オイリュトミー療法も、ヴァルドルフ学校の初期から発展し、効果を上げています。